第二章 繋
「はぁ〜、ごちそうさまってばよ」 「お粗末様」 ナルトは万遍の笑みで手を合わせた。 その無邪気な姿にカカシは小さく笑う。 「あ、やべぇ・・」 「うん?」 「終電!」 「ああ、終わっちゃったね」 時計を見ると既に終電を過ぎていた。 「泊まっていけば?どうせ俺一人じゃ広すぎる家だし」 「え?いいってば?」 「もちろん。大歓迎」 「じゃ、お言葉に甘えるってばよ」 ニシシと笑うナルトに嬉しそうに笑みを漏らすカカシ。 「その代わり、食器を洗ったりするの手伝ってね」 「えー・・・俺ってばお客様ぁ〜」 「泊めてあげるんだから文句言わないの」 ナルトの手を掴んでキッチンまで誘導した。 「俺が洗っていくから、ナルトはすすいでちょうだい」 「・・・しょうがねぇな」 「全く、当たり前でしょ?」 「へへ・・・でもさ!俺ってばこんな風に身内以外の人と一緒に居たことってあんまりないから、 嬉しいってばよ」 「ナルト・・・・」 ニッカリと笑うナルトを少し驚いたような表情で見る。 カカシはたっぷりの泡で食器を洗っていく。 それをナルトはすすぎ、食器乾燥機の中においていく。 「ねぇ、ナルト」 「何だってば?」 「俺さ、今日は休みなんだ」 「へぇ〜珍しいんだな」 「珍しい?」 「うん。だって、俺が入院しているときって毎日いたじゃん。 俺ってば、先生がいつ休みをとってんのか気になっていたってばよ」 そう。 ナルトが入院しているときはカカシはほぼ毎日ナルトの病室に居た。 それこそ、いつ休みを取っているのか気になるほどだった。 「あーあれね。ただお前と一緒に居たかったから休みをとらなかっただけ」 「そうなんだってば?なんで?」 「なんでって・・・そんなの簡単じゃない。お前が面白いからだよ」 「面白い?先生、失礼だってばよ」 拗ねたように頬を膨らませる。 本当に20なのかと疑いたくなるくらいに幼い表情だった。 「前にも言ったでしょ?お前は俺が興味を持った唯一の人間だって」 「ああ、そういえば」 「お前みたいなカワリモノが俺は好きなの」 「・・・・」 「納得した?」 「・・・・なんか、照れるってばよ」 少し頬を紅く染める。 カカシからお皿を受け取ったとき、不意に指先が触れた。 「あっ・・・」 無意識に手を引っ込めた拍子に皿が床に落ちた。 ガシャンッという音と共に皿は二人の間で砕け散った。 「あ、わりぃってば!!」 ナルトは素手のままで破片に触れた。 そそっかしい性格のナルトはお決まりのように指をザックリと切った。 「いってぇ!!」 「あ〜あ・・・ほら、素手で触るから!!」 白い指先から溢れる鮮血はフローリングと白い皿の上にポタポタと落ちる。 その指を 「あっ、ちょっ」 「・・・・・・・・」 カカシは口に含んだ。 舌で傷口を撫ぜるように。 「か、カカシせんせ・・・」 「・・・・・・・・」 血を止めるためだと分かってはいても、何処と無く性的な部分を漂わせている。 舐め上げるかのように繰り返される舌の動き。 全身系がその動きに集中しているのが嫌でもわかった。 「・・・んっ・・・・ふ・・・」 「・・・・・ナルト?」 「・・・・・あ・・・」 口から指を外してナルトをマジマジと見る。 赤面して目を閉じている。 その表情に心が揺れるのをカカシは感じていた。 「立って」 「・・・え、あ」 ナルトを立たせ、指を水で洗う。 鮮血は止まりかけていた。 割れた皿と洗物はそのままにカカシはナルトの治療を始めた。 部屋にある救急箱からガーゼと消毒液を取り出し、手際よく処置をする。 「破片は俺が取り除いたから大丈夫だけど、今度からはあーゆーのは素手で触るんじゃないよ?」 「・・・・うん」 未だに真っ赤な顔をしているナルトをチラリと見ながら処置を続ける。 といっても、カカシはエリート医師。 こんな簡単な治療はすぐに終わるのだが、わざとゆっくりとやっていた。 「ごめーんね」 「え?」 「さっき。破片を取るためとはいえ、指を舐めちゃったでしょ?気持ち悪かったよね」 「え、いや、そんなことはねぇってばよ」 「ホントに?」 「ホントだってば」 「よかった・・・」 カカシの安心しきったような表情にナルトは暫し見惚れた。 「お前に嫌われたら、俺すんごく落ち込む」 「俺に・・・?」 「そ。だってさ、お前みたいな奴、この先きっとどんなに長く生きていたって逢えないと思う」 「大げさだってば!」 「大げさなんかじゃないよ。俺は本気でそう思っている」 「・・・・あ、ありがとってば」 「俺のほうこそ、ありがと。こんな俺とこの微妙な関係になってくれて」 「ぷっ、確かに微妙な関係だってばよ」 先程までの緊張しきったような表情から一気に安心して笑っている。 その表情にカカシの顔も柔らかくなる。 「それで、話を戻すけど」 「へ?」 「俺、今日休みなんだけど」 「ああ、そうだった」 「良かったら明日も一緒に居ない?」 「いいってばよ。どーせ暇だし」 処置が終わり、ナルトの手を離し、カカシは再びキッチンへ戻った。 割れた皿の破片を慎重に処理していく。 「あ、カカシせんせー!俺がやるってば!!」 「だーめ!お前って結構そそっかしいところがあるからまた怪我をするのがオチでしょ」 「そ、そんなことないってば・・・」 「どっちにしたって、その指じゃ洗物は無理! 無理に動かしすぎるとふさがった傷がまた開いて血が出るよ?」 「うう・・・」 「わかったのなら、大人しく座っておきなさい」 「・・・わかったってば」 「よろしい」 皿の処理が終わり、洗い残した食器を再び洗い始めた。 そのカカシの後姿をナルトはリビングからずっと見ていた。![]()
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