第一章 事故
それからまた2週間がたった。 今日も担当医はナルトの病室に入り浸っている。 今では当のナルトも気にすることなく、カカシと会話をしたりして暇な時間をつぶしている。 カカシが読書に浸っているときは、同僚に持ってきてもらった仕事を幾つかしている。 「しなくてもいい」と言われたが、何かしないと落ち着かない。 この病室で無駄に時間を過ごすのはとても辛い事である。 「ねぇ、ナルト」 「なんだってば?」 カカシは愛読書から目を離し、ナルトの掛け布団の上に顎を置いた。 そんな風に甘えてくるのは既に慣れているらしく、ナルトは黙々と仕事を続けていた。 「お前ってさ、退院しても俺と会ってくれる?」 「は?」 「“患者”と“医者”じゃなくって、“友達”?として」 「俺と先生が友達?」 「そ」 カカシは顔を上げ、ベッドサイドに座った。 ナルトの左足を避けて右側にわざわざ移動して。 「ダメ?」 「ダメじゃないってばよ。どっちかというと、“友達”じゃないかもしれねーけど」 「ん?じゃ、何?」 「うーん・・・・なんだか微妙な関係だってばよ。 “友達”って言うには年が離れているし、なんだろ・・・。 オレってば、“先生”を“友達”とおんなじカテゴリーにするのが嫌だってば」 「えー先生、ショックー」 「キモイってば・・・」 ナルトがそういうと、カカシも「う〜ん」と悩み始めた。 確かに、“友達”というにはなんとも不思議な関係だ。 「じゃ、“俺”と“ナルト”という関係でいっか・・」 「・・・・・・・もう、なんでもいいてばよ」 正直、自分でもどんなカテゴリーに加えればいいのか分からなかった。 「じゃあさ、お前が退院したら、一緒にお食事しませんか?」 「それってば、デートのお誘い?」 「そーゆーこと」 「もっと美人なナースとかにしろってば」 「嫌だ。あんなケバイ女達と一緒に食事するくらいだったら、ガイと言ったほうがマシ」 「・・・・・ナチュラルメイクの美人もいんじゃん」 「お前ねー。俺が言った事、忘れた?」 「・・・・・・・忘れてた。そういえば、奥さん」 「そーゆーこと」 「ま、オレは別にいいってばよ。その代わり、センセーの奢りだかんな!」 「当たり前でしょ?俺の方がお前より稼いでるんだから」 「んじゃ、楽しみにしとくってばよ」 ナルトがニシシと笑うと、カカシはナルトの右腕を手に取った。 ギブスが外れたその腕には、包帯が巻かれている。 たとえ骨折(ヒビ)が治っていても怪我はまだまだ。 その包帯をシュルシュルと外して塞ぎかけている傷口のガーゼを外した。 「それじゃ、お前のアドレスと電話番号教えてよ? じゃないと一緒に食事できないでしょ?」 「教えたら、また誘ってくれんの?」 「お前が暇なら、何度でも」 「センセー金が無くなるってばよ?」 「俺は優秀だからね。毎日豪遊しても大丈夫なくらいお給料貰ってんの」 「奥さん誘えってば」 「・・・・・・・・・嫌だね」 「悲しむってばよ」 「相手が男なら悲しまないよ」 常にナルトの病室にセットされている医療器具のワゴン。 カカシが入り浸るからナース達が置いていったのだ。 婦長も黙認しているらしく、カカシは勝手に新しいガーゼに換えている。 「オレの医療費って一体幾らすんだろ・・・」 「保険に入っているんでしょ? それにお前の医療費はあの家族が出すらしいぞ」 「ええっ!!?」 「知らなかったのね」 「そんなの、困るってば!!!」 「ナルト」 カカシは包帯を巻き始めた。 この行為自体は普段ならナースの仕事。 それを優秀な外科医のカカシがやっている。 「甘えて払わせてあげなさいよ」 「だって、悪いってば・・・」 「じゃ、ナルトは逆の立場だったらどーする?」 「逆の立場?」 「そ。お前の命を救ってくれた人が大怪我。 その医療費、その人が負担するって言い張っていたら?」 「そんなの、オレが責任もって払うに・・・あ」 「ね。助けてもらった方だって、いろいろとお礼がしたいのよ。 愛娘の命を救ってくれたヒーローを目の前にした親なら尚更」 「・・・・・・・・」 「ね?あまえてしまいなさいよ」 「・・・・・わかったってば。でもっ」 「わかってる。そんなに高くないから安心しなさい。 ナルトの医療保険から幾らか出てるから、その分を控除したら随分安くなるから」 どんな状況であっても、落ち着かせてくれるカカシにナルトは少なからずとも救われている。 それはカカシも同様。 今までの自分の中からは想像もできないくらいの温かさをナルトが与えてくれている。 二人が惹かれあうまでもう少し・・・・・。 第一章 終![]()
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